サービス総研とは


私たちは、サービスに関する各種調査や研究を行っています。その背景にある考え方は、単に研究のための研究ではなく、自分たちが豊かで愉しく役に立つサービスを生活者として受け取ることができる社会の創造と維持を図ることにあります。

そのため、研究の方法は科学的な厳密性を尊重しながらも、生活者一人ひとりの思いや考えをないがしろにせず、現実を自分たちの生活感をもとに直視し理解するところからスタートすることを心がけています。

メンバーそれぞれが自らの関心領域の研究に取り組みつつ、定期的に研究会や交流事業のなかで自由な意見の交換を行っています。また市民科学(Citizen Science)の考え方のもと、一般の市民(生活者)にも広く門戸を開いて活動しています。

活動内容

現在の研究は、以下のような各産業(業界)別のテーマとトピックスをもとにしたテーマをもとにした取り組みをしています。

Ⅰ 業界別テーマ

・行政サービス
・教育サービス
・物流サービス
・金融サービス
・情報サービス
・観光サービス
・エンタメサービス
・医療サービス
・飲食サービス
・宿泊サービス
・航空サービス
・小売り流通サービス
・人材サービス
・通信サービス、など

Ⅱ テーマトピックス

・ロボット/AIによるサービスの進展像
・期待される高齢者対象のサービスとは
・持続可能な観光サービスとは(たとえば、オーバーツーリズムへの対応)
・カスタマーハラスメントの現状と課題
・サービススタッフの人材育成
・行政は民間のサービスにどこまで立ち入るか
・広告、特に詐欺性が疑われるネット広告
・各種障がい者にとって望まれるサービスとは
・訪日外国人にとっての日本のサービスとは
・サービス・デザイン
・各種行政サービスについて市民はどう受けとめている
・サービスの不便性はどこに存在するか
・デジタルサービスの信頼性
・公共サービスの満足度調査、など

日時:2026年6月16日(火)
内容:企業の意識改革について ~サービスの視点からの考察~
場所:横浜市大倉山記念館

日本航空が経営破綻後に取り組んだ構造改革の内容について議論した。
企業再生のための改革は、事業構造改革、意識改革、経営管理体制の構築の3つの柱
で構成されていたが、2番目の社員の意識改革の取組をハイライトし、そのエッセン
スや、浸透のためのプロセスを紹介した。意識改革の浸透によって所属部門に関わら
ず社員のお客様視点が強化され、これに伴ってサービス面において発現したポジティ
ブな変化の事例について意見交換を行った。縦割りから組織横断的な意識の変換、部
分最適から全体最適への視点の転換がサービス面においても大きな役割を果たす事
を確認した。

日時:2026年3月3日(火)
テーマ:「カスハラ」とはどういう現象なのか
場所:早稲田大学

今回の研究会では、近年社会問題化しているカスタマー・ハラスメント(カスハラ)の実態、発生要因、課題をサービス・マネジメントの観点から整理、議論した。
カスハラは単なる苦情ではなく、不当な要求や威圧的な言動を伴う迷惑行為であり、サービス従事者の精神的負担や離職の要因となっている。一方で、正当なクレームはサービス改善につながる重要な情報であり、両者を明確に区別する必要がある。発生の背景には、「お客様は神様」という社会通念や過度な顧客第一主義、消費者権利意識の高まり、SNSの普及、不安定な社会情勢などが複合的に影響している。また、行政や企業が「カスハラ」の概念を安易に用いて正当な苦情まで抑制する危険性にも警鐘を鳴らした。解決には顧客、従業員、管理職、経営者、社会がそれぞれの役割を果たし、顧客満足を高めるサービス改善と適切な対応体制を構築することが重要である。

日時:2025年12月3日(水)
テーマ:現在の大手流通サービスに見る問題を探る
場所:早稲田大学

今回の研究会では、イトーヨーカ堂とイオンを中心に考察した報告をもとに日本の総合スーパーマーケット(GMS)の衰退要因と今後の小売サービスの方向性を議論した。
GMSは低価格・総合品揃えを強みに成長したが、消費者ニーズの多様化や専門店・食品スーパーの台頭、情報技術の普及による品揃えや売場の同質化により競争力を失ったことが指摘される。また、POSシステムやカテゴリーマネジメントは業務効率を高めた一方、独自性を低下させたこと、プライベートブランドではイオンが自社主導、イトーヨーカ堂がメーカー協働という異なる戦略を採ったことを比較し検討を行った。さらに創業理念の継承、公正な取引、競争的協調の重要性を論じ、今後はAIやデジタル技術を活用した省力化や個別最適化を進めるとともに、地域社会との共生や体験価値を重視したサービスへの転換が日本の小売業の持続的発展に不可欠である。

日時:2025年8月23日(土)
テーマ:金融サービスにおけるAI/ロボット利用の現状
場所:早稲田大学

今回の研究会では、金融サービス分野におけるAI・ロボットの活用状況と、サービスデザインの役割について、日本および北米の事例を比較、考察した報告をもとに議論を行った。

銀行・証券・保険の各業界では、AIはチャットボット、審査支援、業務効率化、不正検知などで活用が進む一方、生成AIは社内業務での利用が中心で、顧客接点への本格導入はハルシネーションなどの課題から実証段階にとどまる事例が多い。また、サービスデザインに関してはUI/UX改善の事例は見られるものの、顧客体験全体を設計する実践例は限定的であることが確認された。今後は人手不足や高度化する顧客ニーズへの対応のため、AIをフロント・バックステージを含むサービス全体へ展開するとともに、カスタマージャーニーや人間中心設計などのサービスデザインを取り入れ、顧客本位とAI倫理を両立した金融サービスを構築することの重要性を議論のなかで確認した。