ここでは、新しいサービス研究に関する論文や記事などを順次、紹介していきます。
「ホスピタリティ分野におけるサービス・ロボット:従業員の認識と組織的支援の役割の理解」
本研究は、ホテルなどホスピタリティ産業におけるサービス・ロボット導入が従業員の離職意図に与える影響を分析している。米国のホスピタリティ従業員279名を対象とした調査データを構造方程式モデリングで検証した結果、ロボットが仕事の成果を高めるというパフォーマンス期待はロボットに対する知覚リスクを低下させる一方、利用に手間がかかるという努力期待はリスク認知を高めることを明らかにしている。さらに、この知覚リスクが従業員の離職意図に影響する媒介要因として働くことが確認された。また、組織が従業員を支援しているという知覚組織支援は、ロボット導入によるリスク認知を緩和し、離職意図を抑える調整効果を持つことを示している。
https://doi.org/10.1080/19368623.2025.2553709
「サービスにおける従業員―ロボット協働:心理的所有感、顧客の帰属認知、および顧客エンゲージメント」
本論文は、サービス現場における従業員とロボットの協働(employee–robot collaboration)が顧客反応に与える影響を、「心理的所有感(psychological ownership)」の観点から解明しようとしている。これまで研究は、ロボット単独のサービスに焦点を当てることが多かったが、本研究は人間とロボットが共同でサービス提供する状況を対象とし、ロボットの操作可能性・応答性・魅力といった特性が心理的所有感を喚起し、それが企業がロボットを導入した理由を「サービス向上」と顧客が帰属する認知を媒介して、顧客エンゲージメントを高めることを示している。また、コスト削減動機の帰属は顧客反応に影響しないことを明らかにし、人間―ロボットの協働サービスの顧客評価メカニズムを理論的に拡張した。
https://doi.org/10.1080/02642069.2025.2508975
「高齢消費者に対する健康・フィットネスのマーケティング訴求」
本研究では、認知老化研究の「環境的支援(environmental support)」理論とマーケティングの「メンタル・イメージ(mental imagery)」研究を統合し、高齢消費者の身体活動促進が分析されている。従来の研究では健康行動や社会的支援を個別に扱うことが多かったが、本研究は複数の実証研究を通じて、認知負荷を減らす支援が運動動機を高めるメカニズムを示している。また、広告表現の画像強化よりも、立位姿勢など身体状態(embodied cognition)が運動の想像や動機づけを高めることを新たに実験的に示している。さらに、高齢者が特に高強度運動に自信を持ちにくいことを明らかにし、健康・フィットネス産業の具体的介入領域を提示している。
https://doi.org/10.1080/02642069.2024.2355255
「実践としてのサービス(Services-as-Practices)のフレームワーク」
本論文は、サービス研究における「サービスとは何か」という概念を再定義するため、Services-as-Practices(SaP)と名付けた枠組みを提示する。著者はサービスを単なる無形の提供物ではなく、価値共創実践(value cocreation practices: VCPs)の束として捉えるべきだと主張する。これらの実践は、アクターが共有されたテンプレートに基づいて遂行する活動であり、価値を共創するだけでなく、状況によっては価値を毀損(codestruction)する可能性もあることを指摘する。さらに本研究は実践理論を用いてサービス、価値、文脈、アクターの関係を体系化し、6つの命題からなる概念枠組みを提示することで、サービス研究に新たな理論的基盤を提供している。
「不都合な真実:デジタル・プラットフォームにおけるサービス不便性の理解」
本研究は、デジタル・プラットフォームにおけるサービスの不便さ(service inconvenience)が顧客満足に与える影響を分析している。フードデリバリー・アプリに関する222,371件の書き込みをテキスト分析し、サービス利便性のモデルと帰属理論を統合して検証している。分析結果として、配送の遅延や注文キャンセルなどの不便さは満足度を大きく低下させるが、その影響は消費者が原因をどう解釈するかによって大きく増幅されることが判明した。特に「同じ問題が繰り返される」と認識される安定性帰属や「企業の責任」と判断される責任帰属がある場合、満足度への負の影響は数倍に拡大する。また分析から、リモートサポートの不便さ(顧客サポート対応の不備)という新しい概念も抽出された。これらの結果は、プラットフォーム企業が不便の原因説明や顧客対応を改善する重要性を示している。
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